マンションの一部屋(以下区分建物)を購入すると、たいてい敷地権も一緒についてきます。では、なぜマンションの部屋だけ買ったのに、敷地権もついてくるの?と、不思議に思う方もいるかもしれません。
では、一軒家を想像して下さい。家を買う時には、建物だけ買うってことはあまりないですよね。建物の敷地を親が持っているなどの事情がない限り、建物の敷地も一緒に買うもしくは借りないと、建物を建てられません。
マンションの場合、一つの建物に、数人~数十人住んでいることが通常です。マンションの住人が皆各々土地を購入すると、皆で床面積割合で共有することになりますね。その権利をまた売った場合、建物は登記を見ればすぐに分かりますが、土地の登記はというと、「A持分全部移転」「B持分全部移転」「C持分全部移転」・・・登記の量が膨大複雑になって、公示の明瞭が保てなくなってしまいます。
これを防ぐために、一定の場合には、区分建物とその区分建物に係る敷地の利用権は分離して処分することができないこととしました。(分離処分禁止)
Ⅰ 敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利(地上権、賃借権)であること・・・つまり、土地の権利が共有の場合、その区分建物は自己の持分で一体化します。
Ⅱ 敷地利用権が単独で使用する所有権その他の権利である場合において、その者が一棟の建物に属する全部の区分建物を所有する時・・・全区分建物を所有している人が、土地の権利も単独でもっているなら、一体化します。
言葉をよく見て頂くとわかるように、意思とは無関係に一体化してしまうのです。ですが、これは「分離処分可能規約」を定めることにより、区分建物と敷地利用権を分離して処分することができます。この先は、専門的な事になってきてしまうので、すこし話を戻します。
敷地権とは、マンションの部屋(区分建物)と敷地利用権(所有権、地上権、賃借権)が分離して処分できないことをいいます。
そして、登記に関していえば、建物の表題部に敷地権である旨の登記が入ります。
土地のほうは、「所有権敷地権」「地上権敷地権」「賃借権敷地権」と登記され、建物の名称等が公示されます。そして以後、区分建物の登記のほうに土地の権利の変動が公示されます。つまり、土地の利用権と区分建物は一体となって処分されるため、区分建物の登記を見れば十分ということになります。
例えば、敷地権の旨の登記がある、区分建物の登記に抵当権が設定されていた場合。それは、区分建物と敷地権にも抵当権の効力が及んでいるということになります。さきほど、分離処分禁止はここで重要な意味を表します。つまり、敷地権の旨の登記が入ってしまったら、以後、区分建物だけ、土地の共有持ち分だけには抵当権設定の登記をすることができません。区分建物と敷地利用権をセットで抵当権設定するしかできないのです。 そのため、区分建物の登記の方に公示するだけで、敷地利用権にも抵当権の効力はおよんでいることが読み取れるのです。
ですが、例外はあります。例えば、抵当権設定契約の日付が敷地権になる前の場合などです。まぁ原則はできないということですね。さらに、土地の方に抵当権が付いている場合。それは、敷地権になる前の設定よるものですので、登記の対効関係になり、先に登記した方が勝ちになります。では、建物だけに敷地権より前に抵当権が付いていた場合はどうでしょうか。その場合は、その抵当権に「○番登記は建物にのみに関する」と付記されます。