さて、ここまでで相続人は確定できました。それでは、その者たちで相続財産をどのように分けるのでしょうか。
相続が開始すると、被相続人の財産は相続人に移転し、さらに相続人が複数いるときには遺産は相続人の共有に属します。この共有状態を解消する為に、遺産分割協議を行い、各々単独で相続します。つまり、遺産分割協議を行わない場合には、民法は共有で相続するようにしているのです。
では、遺産分割はどうするのでしょうか。
① 指定分割 被相続人が遺言で遺産分割の方法を定めていたら、原則これに従います。ですが、遺言執行者がいない場合には、相続人全員の合意で遺言と異なった方法の分割は可能だと考えられています。
② 協議分割 被相続人が遺言で分割方法の指定又は禁止がない場合には、共同相続人は協議によっていつでも遺産の分割をすることができます。おおよそほとんどの遺産分割はこれにあたります。
③ 調停・審判分割 共同相続人間に遺産分割の協議が整わない場合又は、協議することができない場合には、各共同相続人は家庭裁判所にその分割の請求をすることができます。実務上、調停を経てから審判へと移行します。調停は、中立的な調停委員の下、話し合いで分割内容を合意します。調停が不成立になった場合には裁判官が審判を下し、分割を実行します。
では、実際にどのように遺産を分割するのでしょうか。
Ⅰ 現物分割 その名の通り、現物をそのまま配分する方法です。これが原則的な方法です。この土地はAさんが。この土地はBさんが。というように通常は、各遺産を相続人が単有で取得するように分割します。ですが、必要に応じて相続人が共有で取得するようにすることもあります。その場合、以後は民法上の共有・準共有となり、遺産に関する規定の適用を受けません。
Ⅱ 代償分割 これは、遺産を相続人の一人が取得し、代わりに他の相続人へ相続分を金銭で代償する方法です。審判分割においてはこの方法は、「特別の事由があると認められるとき」でなければなりませんが、協議分割は自由に分割ができます。
Ⅲ 換価分割 遺産を金銭に換価して、これを相続人間でわける方法です。これも、協議分割では自由に行い得ます。
つまり、遺産分割については、相続人間で自由に決められるのです。ここで注意すべきは、遺産分割を行うのは相続人全員でなければなりません。例え、行方不明の子供や認知している隠し子がいたとして、法律上相続人となる以上はその者を省いて行うことはできません。