生命の危険が急迫している時には、遺言者は署名押印ができないことがあります。その場合、遺言者は3人の証人に立ち会ってもらい、その証人のうち一人に、遺言の趣旨を口授します。口授を受けた証人は、これを筆記し、遺言者及び他の証人に読み聞かせ又は閲覧させます。各証人はその筆記が正確な事を承認した後、これに署名押印します。
もし、遺言者が話せない場合には、証人の面前で、遺言者が遺言の趣旨を手話で通訳人に伝達し、それを通訳人が口頭で申述して。口授にかえなければなりません。(民法第976条2項)
では、耳が聞こえない場合はどうでしょうか。口授を受けた証人が通訳人に筆記内容を伝え、それを通訳人が手話で遺言者又は証人に伝えることにより、読み聞かせに代えることができます。(民法第976条3項)
口授にあたる例として、こんな判例があります。「証人の一人(医師)が、弁護士が遺言者の配偶者から聴取した内容をもとに作成した遺言書の草案を一項づつ読み上げたところ、遺言者はその都度うなずきながら『はい。』と返答し、最後に、これで遺言書をつくってよいかとの証人の質問に対し、『よくわかりました。よろしくお願いします。』と答えた場合。」(最判平11.9.14)
この遺言は、遺言の日から20日以内に、証人の一人又は利害関係人から家庭裁判所に請求して、遺言の確認を得なければならない。この確認がないと効力を生じません。遺言者は自ら作成することができないため、遺言が真意に基づいてなされたことを確認するためであり、遺言の有効性を確認するものではありませんので、ご注意ください。
では、その「遺言の確認審判申立て」はどうするのでしょうか。
まず、申立ができる人は立会いに参加した証人の一人又は利害関係人で、期間は遺言者の生死にかかわりなく遺言の日から20日以内。申立て先は、遺言者の死亡後は相続開始地の家庭裁判所、遺言者が生存している場合にはその住所地の家庭裁判所です。費用は、収入印所800円(遺言書1通毎)、予納郵便切手代(裁判所によって異なる)。添付書類は、遺言者・各立会い証人・申立人の戸籍謄本、遺言書の写し、医師の診断書(遺言者が生存中に限る)です。
さらに、相続開始後は家庭裁判所の検認は必要のでご注意ください。
これで、死期が迫って思うように普通の方式で遺言ができない人にも遺言が可能となりました。平成11年に改正、追加された項目です。