相続人の中に行方不明者がいる

 相続人の中に行方不明者がいた場合、遺産分割協議はその行方不明者を除いて・・・なんてことはできません。その場合には、不在者財産管理人を選任し、行方不明者の代わりに協議に参加してもらいます。もし、行方不明になって7年が経過しているようなら、失踪宣告を裁判所に申し立てすれば、その者は死亡したものとされ、残りの相続人で遺産分割協議ができます。

 不在者財産管理人の選任は、行方不明になった方の最後の住所地の家庭裁判所へ「不在者財産管理人選任申立書」を提出します。費用は収入印紙800円、予納郵便切手です。切手代は裁判所によって異なりますので、予め確認が必要です。また、管理人の候補者を指定することもできますが、その者が選ばれるかどうかは裁判官次第です。

 不在者財産管理人を選任すればすぐに遺産分割協議ができるのかというと、そうではありません。

 協議をするには、管理人から裁判所へ「権限外行為許可審判申立書」を提出し、審判を得る必要があります。これは、管理人は民法第103条に定められ権限(① 保存行為 ② 利用、改良を目的をする行為)しかないため、この権限を超える行為をするには、家庭裁判所の許可が必要を民法で定められているからです。(民法第28条)

 もし、不在者財産管理人を選任せずに、残りの相続人だけで遺産分割協議を行った場合、一部の相続人を除外してなされた協議は、原則として、無効であり、除外された相続人は他の相続人に対して再分割を請求することができます。ですので、せっかく協議をしたところで、のちに無効主張される可能性があるとなると、なかなか落ち着かないですよね。それに、不動産の登記をする場合には、法務局は戸籍で相続人の是認が遺産分割協議に参加していないことが分かりますので、受理されないことになります。